ハイドアンドシーク
「さっき、ありがとうございました」
ドアを閉めた瞬間、今までの騒がしさが嘘のように部屋に静寂がおとずれる。
『こいつ、髪伸びるの遅いんだよ。お前らと違って』
『それ変態は髪伸びるの早い的なやつすか!?』
『勘弁してくださいよ統理さーん!』
あのあと、東雲さんの登場によりわたしの髪のことなんてどうでもよくなったらしい。
わいわいと東雲さん(その前にいるわたしは無視)に話しかける姿はやたらとほほ笑ましかった。
そこまで慕われていたら東雲さんだって悪い気はしなかったはず、なのに。
声をかけてもちらりとこちらを一瞥しただけの彼は、なんだか少し不機嫌そうだった。
「むやみやたらに触らせんなよ」
東雲さんは触ってくるくせに、って言葉をすんでの所で呑み込む。
少し考えれば、それはわたしのために言ってくれてるんだってわかるから。
だけど、そんなに怒ることなのかなって。
わたしだって考えなしに動いてるわけじゃないのにな、信用されてないのかなって素直に受け取れない自分もいた。
「切れば。バレるのも時間の問題だろ」
最初、なんのことを言われたのかわからなかった。
だけどそれはわたしの髪のことを言っているのだと気づいたとき。