ハイドアンドシーク


その瞬間、頭上から布団が消えて天地がひっくり返った。

必死に顔を押しつけていた枕に後頭部が埋もれ、涙目にかすんで映ったのは。


怒っているでも、馬鹿にしているでもない。

初めて見るその表情に、胸が詰まった。



「あんま触らせるなって言ったのは」

「……うん」

「お前が、」

「うん」


見切り発車だったのか、東雲さんにしてめずらしく歯切れが悪かった。

それでも、なかなか言われない続きにもどかしくなるどころか、心臓がバクバクと音を立て始める。


うるさい。

東雲さんの声が聞こえない。



「お前が、……よくないから」

「…な、なんて?聞こえなかった、わたしのなにがよくないから、って?」


やっぱり邪魔になったわたしの心音。

もういっかい言ってほしくて、訊き返した。


そしたらこのひと、どうしたと思う?



「……ッたぁ!? え、は!?」


いきなり弾かれたおでこをおさえて、びっくり仰天。

いうほど痛くはなかったけど……じゃ、なくて!

わたしなんでいまデコピンされたの!?


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