目覚めない夫を前に泣き腫らして、悲劇のヒロインを気取る暇なんてなかった。
そうやって、彼は私にとって何よりも大切な存在となっていった。
出席した夜会の場で、私は自分の夫が賞賛されるたびに、我が事のように誇らしく思った。
もちろんそれは大半が社交辞令であったろう。
あるいは、「夫はこんなに素晴らしいのに、その妻ときたら……」という皮肉も、中には混じっていたかもしれない。
だとしても、カミルが賞賛すべき人であることは揺るぎのない事実だったし、そんな彼の隣で妻として並び立てるのが自分であることに、私はこれ以上ない喜びを感じていた。
そして私はいつの頃からか、少しずつではあるけれど、夫以外の人との接し方、人付き合いを学んでいくようになる。
彼の妻としてふさわしい女であるように、恥ずかしくないように、少しでも彼に近づきたいと思うようになっていった。