カレシの塁くんはあたしの唇を求めてない
塁くんはモテる。高校に入学してそんなに日は経っていないにも関わらず、両手で収まらないほどには告白されている。けれど、塁くんは全ての告白を断っている。
それは、あたしが好きだから? なんであたし? こんな至って普通のどこにでもいるような人間の、どこに惹かれる要素があったのだろう。
嬉しさよりビックリが勝ってしまい返事を返せずにいると、悔しそうな、泣きそうな表情に更に硬直した。あたしがこんな素敵な、カレシにしたいナンバーワンの塁くんを振るはずない。むしろ勿体ないくらいだ。
普通、あたしみたいな凡人は塁くんには手が届かない。そのくらい分かっている。分かっているから頭の中で処理ができない。
「……あ、あたしのこと、いつから?」
「中学の時に教室は違ったけど塾が一緒で。それから。最初はカワイイなって思ってて、それから段々目で追うようになって、他人を通してだけどどんどんしーちゃんを好きになって。他のヤツに、しーちゃんがここの高校受験するって聞いたからオレもここを受験した」