カレシの塁くんはあたしの唇を求めてない



『高校に入ってから』とか『同じクラスになってから』とかそういう答えが返ってくるのだとばかり思っていたけど全然違った。



――いや、『全然違う』どころの話ではない。塁くんの高校受験まで左右してしまっていたなんて思わなくて『なんかゴメン』と謝罪した。



塁くんに告白をされたら振ることはないと思っていたけど、付き合ったとしたら、きちんと塁くんの気持ちに答えられるのか不安になった。



「謝って欲しいだなんて思ってない。オレはこうして、しーちゃんと同じクラスになれて、自分の想いを伝えられて最高に幸せだよ。オレと付き合ってくれる?」



ニコッと微笑む塁くんの笑顔はやっぱり王子様で、その笑顔に胸がぎゅうっと締め付けられる。



あたしも塁くんといたい。



塁くんを知っていきたい。



「よろしくお願いします」



――こうしてあたしは塁くんのカノジョになった。



けれど、三ヶ月経っても『手を繋ぐ』から進展することはなく、夏休みも中盤、文化祭の準備の時期へと突入した。


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