通学路
「今日も敬斗君と一緒に行くの?」

 卒業式の朝、母が言った。

「うん」
「じゃあお母さんは、敬斗君のお母さんと一緒に後で行くね」
「わかった」

 サラダを口に運びながら琴梨は返事した。

「最後だね」
「うん、そうだね」

 最後。
 その言葉がやけに心に染みる。

 琴梨はいつもより念入りにブローした。
 合わせ鏡で後ろ髪を確認していると、インターホンが鳴った。

「あら、おはよう。今日は早いのね」

 母の声がして、手鏡を片手に玄関を覗くと、敬斗が立っていた。

「あれ? 敬斗、早いじゃん」
「おう。今日は最後だし、歩きで行こうと思って」
「うそっ、ちょっと待って!」

 琴梨は慌てて支度して家を出た。

 
 いつもの通学路が今日は全く違って見える。
 久しぶりに並んで歩くのが、何だか照れくさい。ちらりと横目で見ると、敬斗も今日は髪型に気合いが入っていた。
 色んな出来事を思い出していると不意に涙が溢れ、琴梨は足を止めた。

「えっ!? ちょっ、な、何だよお前!!」

 振り返った敬斗が声を裏返し、動揺しているのが窺えた。かと思えば、「フライングかよ」と今度は笑いながら茶化す。

「それとも、明日から俺と通学できないのが、そんなに寂しいのか?」

 その言葉でさらに涙が溢れて、琴梨は小さく頷いた。

「まじか……」

 敬斗の頬が少し染まったような気がした。

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