通学路
「また会おうね」と約束を交わし、校門の前で皆と別れた。
 少し先のバス停のベンチに腰掛ける敬斗の姿が目に入り、琴梨の胸は高鳴った。

「敬斗……」
「おせえよ。お前どうせひとりだと思って待ってた。一緒に帰ろ」
「……うん」

 ベンチから立ち上がると、敬斗が手を差し出した。

「え?」
「ほら、早く!」

 いつものように急かしてから、返事を待たずに琴梨の手を握った。
 まるで、琴梨が拒否しないことを分かっていたかのように。

 
「琴梨、ずっと好きだった」

 あまりにも自然すぎて、聞き流してしまいそうだった。

「……え?」
「小学生の時からずっとだ。琴梨がいたからサッカー頑張れた、って言ったら大袈裟だけど……」
「何それ。そこは、私のおかげでいいじゃん」

 思わず吹き出してしまった。

「でも、琴梨が『頑張れ』って言ってくれたから、頑張れた」
「そっか」

 頬が熱い。

「琴梨の朝練、本当は七時半からだっただろ?」
「え? ……うん」
「もしかして、俺の七時からの朝練に合わせてくれてた?」
「まあね。いつも自転車の後ろ乗せてもらってるし」

 本当は毎日一緒に登校したかった。

「音楽室の窓からいつも琴梨が覗いてるの見えてた」
「やだっ、バレてたんだ」
「誰を見てたのかは知らねえけど……」

 もちろん、敬斗だ。

「いつも試合の応援来てくれて、すげえ嬉しかった」
「……うん」

 頑張ってたね。

「これからも、応援してくれるか?」
「もちろん」

 大好きだよ。


「琴梨に貰ったミサンガ、今日、切れたんだ」

 敬斗がそれをポケットから大事そうに取り出した。

「願い事、叶うといいね」

 琴梨は繋いだ手に力を込めた。





 二人で通ったこの道は――


『皆様どうぞ大きな拍手でお迎えください』


 ――バージンロードに繋がっていた。


 スポットライトに照らされ、割れんばかりの拍手を浴びる。


「琴梨、これからもずっと一緒な」





【完】
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