婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 魔導師と呼ばれているのは、魔力を持って生まれた者たちで、彼らは自らの魔力で魔法を使う。
 魔力はないけれど、魔法を学び、魔導師が作った魔石を媒介として魔法を使うのが、魔術師と呼ばれる者たちだ。
 魔力を持っている者はとても少なく、魔法を使える者のほとんどが、この魔術師だった。
 そして最後が、魔女である。
 女性だけが生まれ持った資質で、魔導師とは桁違いの魔力を持ち、呪文も媒介も必要ない。
 それは、ただ願っただけで、すべてを叶えてしまうほどの強い力だ。
 クロエは知らなかったが、クロエはその「魔女」だったのだ。
 だから普通の魔法など、邪魔だと思うだけで吹き飛んでいく。
 後ろで婚約者だったキリフが、まだ叫んでいる。
 望み通りに婚約を解消したというのに、何が不満なのだろう。
(うるさいなぁ。いろいろと考えなきゃいけないんだから、静かにしてほしいのに)
 そう思った途端、周囲が静かになった。
 これで考えごとに集中できる。
(うん、これでいいわ。まず屋敷に戻って旅支度をしましょう)
 クロエはそのままメルティガル侯爵家の馬車に乗って、屋敷まで急いだ。
< 10 / 276 >

この作品をシェア

pagetop