婚約破棄されたので、好きにすることにした。
「本当に、前途多難だったわね……」
夕暮れ時。
マードレット公爵邸の広い部屋から窓の外を見つめていたクロエは、今までのできごとを思い出して、そっと溜息をつく。
移民の魔導師として冒険者ギルドに所属していたクロエに目を付けたのは、王太子ジェスタの婚約者である、マードレット公爵令嬢のアリーシャだ。
彼女はクロエと同じ『魔女』である王女カサンドラからジェスタを守るために、魔力はないのに魔法を学び、『魔術師』となった。
魔力があり、願っただけですべてを叶えるほどの力を持つ、クロエやカサンドラのような存在を『魔女』と呼ぶ。
そして魔力を持って生まれ、魔法を学び、呪文を唱えて魔法を使うのが、『魔導師』。
魔力がなくとも、魔法を学び、魔導師が作り出す魔石を使って魔法を使うのが、アリーシャのような『魔術師』である。
国唯一の魔女だったカサンドラ王女は我儘で、侍女に怪我をさせたり、気に入らない者を排除したりと、やりたい放題だった。
アリーシャは、そんなカサンドラと対抗すべく、質の良い魔石を求めていた。
そこで移民のクロエを自分の義妹にして、魔石の確保、そして国に所属していない魔導師という存在を得ようとしたのだ。
(この国では魔導師も極端に少なくて、全員が国に仕えているのよね)
窓の外の夕陽を眺めながら、そんなことを考える。
だから、移民の魔導師であるクロエを味方にしようとしたのだろう。
だがそのクロエの元婚約者は、第二王子のキリフだ。
彼はクロエにまったく興味がなく、いつも蔑んでいたから、髪色を変えただけで、顔を合わせてもわからないだろう。
それでも貴族社会の一員となれば、父や兄と会う機会もあるかもしれない。
そこでクロエは魔女の力を使い、身内と元婚約者だけではなく、エーリヒを除いたすべての人間が、クロエの顔を思い出せないようにした。
直接顔を合わせ、会話をしたとしても、それがメディカル侯爵令嬢のクロエだとは、誰にもわからないだろう。
夕暮れ時。
マードレット公爵邸の広い部屋から窓の外を見つめていたクロエは、今までのできごとを思い出して、そっと溜息をつく。
移民の魔導師として冒険者ギルドに所属していたクロエに目を付けたのは、王太子ジェスタの婚約者である、マードレット公爵令嬢のアリーシャだ。
彼女はクロエと同じ『魔女』である王女カサンドラからジェスタを守るために、魔力はないのに魔法を学び、『魔術師』となった。
魔力があり、願っただけですべてを叶えるほどの力を持つ、クロエやカサンドラのような存在を『魔女』と呼ぶ。
そして魔力を持って生まれ、魔法を学び、呪文を唱えて魔法を使うのが、『魔導師』。
魔力がなくとも、魔法を学び、魔導師が作り出す魔石を使って魔法を使うのが、アリーシャのような『魔術師』である。
国唯一の魔女だったカサンドラ王女は我儘で、侍女に怪我をさせたり、気に入らない者を排除したりと、やりたい放題だった。
アリーシャは、そんなカサンドラと対抗すべく、質の良い魔石を求めていた。
そこで移民のクロエを自分の義妹にして、魔石の確保、そして国に所属していない魔導師という存在を得ようとしたのだ。
(この国では魔導師も極端に少なくて、全員が国に仕えているのよね)
窓の外の夕陽を眺めながら、そんなことを考える。
だから、移民の魔導師であるクロエを味方にしようとしたのだろう。
だがそのクロエの元婚約者は、第二王子のキリフだ。
彼はクロエにまったく興味がなく、いつも蔑んでいたから、髪色を変えただけで、顔を合わせてもわからないだろう。
それでも貴族社会の一員となれば、父や兄と会う機会もあるかもしれない。
そこでクロエは魔女の力を使い、身内と元婚約者だけではなく、エーリヒを除いたすべての人間が、クロエの顔を思い出せないようにした。
直接顔を合わせ、会話をしたとしても、それがメディカル侯爵令嬢のクロエだとは、誰にもわからないだろう。