婚約破棄されたので、好きにすることにした。
応接間に通して、向かい合わせに座る。
エーリヒの部屋はクロエの部屋の隣にあるが、彼は寝るとき以外、ほとんどクロエの部屋にいる。婚約者同士なのだからと、マードレット公爵家でも、それを容認してくれていた。
今日もエーリヒがいることを確認したアリーシャは、微笑ましそうに見つめたあと、ふたりに聞いてほしいことがあると言った。
「あの夜会のすぐ後に、カサンドラ王女殿下から抗議があったの」
王女の名前を聞いて、エーリヒの体が僅かに強張る。
クロエはそっと、彼の手を握った。
「エーリヒは自分の近衛騎士だから返してほしいと。それと、アウラー公爵からも」
「あの人から?」
予想外だったらしく、エーリヒは驚いたように聞き返す。
「ええ」
夜会のあと、我に返ったカサンドラは周囲に当たり散らし、大騒ぎをして、国王によって魔法の使えない塔に閉じ込められたらしい。
そんなカサンドラのエーリヒへの執着を目の当たりにして、利用価値があると思われてしまったのかもしれない。
「それと、クロエに婚約の話を持ち掛けてきた者もいたわ」
「私にも?」
エーリヒの部屋はクロエの部屋の隣にあるが、彼は寝るとき以外、ほとんどクロエの部屋にいる。婚約者同士なのだからと、マードレット公爵家でも、それを容認してくれていた。
今日もエーリヒがいることを確認したアリーシャは、微笑ましそうに見つめたあと、ふたりに聞いてほしいことがあると言った。
「あの夜会のすぐ後に、カサンドラ王女殿下から抗議があったの」
王女の名前を聞いて、エーリヒの体が僅かに強張る。
クロエはそっと、彼の手を握った。
「エーリヒは自分の近衛騎士だから返してほしいと。それと、アウラー公爵からも」
「あの人から?」
予想外だったらしく、エーリヒは驚いたように聞き返す。
「ええ」
夜会のあと、我に返ったカサンドラは周囲に当たり散らし、大騒ぎをして、国王によって魔法の使えない塔に閉じ込められたらしい。
そんなカサンドラのエーリヒへの執着を目の当たりにして、利用価値があると思われてしまったのかもしれない。
「それと、クロエに婚約の話を持ち掛けてきた者もいたわ」
「私にも?」