婚約破棄されたので、好きにすることにした。
 驚くクロエの手を握っていた、エーリヒの顔が険しくなる。
「……誰だ?」
「侯爵家の子息と、アウラー公爵家の血筋の者。そして、キリフ王子殿下ね」
「へ?」
 かつての婚約者の名前を聞いて、思わず間の抜けた声が出てしまった。
「キリフ殿下って、ジェスタ王太子殿下の……」
「ええ。異母弟よ。彼にはもう後がないから、必死なのでしょう」
 アリーシャはそう言って、キリフの今の状況を語ってくれた。
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