婚約破棄されたので、好きにすることにした。
(えーと、何があったのかな)
美紗としての意識がはっきりとした途端、死にたくなるような切なさや悲しさは薄れていた。
冷静に、今までのクロエとしての人生を思い出してみる。
王城で開催された夜会。
クロエは婚約者のキリフではなく、兄のエスコートで会場を訪れていた。
キリフはクロエを迎えに来ないばかりか、装飾品やドレスも贈ってくれなかったのだ。
時間ギリギリまで待ったが彼からの連絡はなく、父にきつく叱咤されながら、慌てて会場に駆けつけたのだ。
そこでクロエが見たのは、美しい男爵令嬢をエスコートする、キリフの姿。
彼はクロエには向けたことのない優しい笑顔で、彼女の手を取っていた。
それを見た瞬間、ショックで頭に血が上り、気が付けば彼女に詰め寄っていた。
「キリフ様は私の婚約者です。取らないでください!」
父から叱咤される恐怖と、キリフから捨てられる恐怖。そのときのクロエの胸にあったのは、そのふたつだけだった。
キルフは冷たい顔で彼の腕に縋ったクロエの手を、振り払った。
ぱしりと手を打たれ、絶望で視界が歪む。
「私はお前などのものではない。思い上がるな」
冷たい声。
美紗としての意識がはっきりとした途端、死にたくなるような切なさや悲しさは薄れていた。
冷静に、今までのクロエとしての人生を思い出してみる。
王城で開催された夜会。
クロエは婚約者のキリフではなく、兄のエスコートで会場を訪れていた。
キリフはクロエを迎えに来ないばかりか、装飾品やドレスも贈ってくれなかったのだ。
時間ギリギリまで待ったが彼からの連絡はなく、父にきつく叱咤されながら、慌てて会場に駆けつけたのだ。
そこでクロエが見たのは、美しい男爵令嬢をエスコートする、キリフの姿。
彼はクロエには向けたことのない優しい笑顔で、彼女の手を取っていた。
それを見た瞬間、ショックで頭に血が上り、気が付けば彼女に詰め寄っていた。
「キリフ様は私の婚約者です。取らないでください!」
父から叱咤される恐怖と、キリフから捨てられる恐怖。そのときのクロエの胸にあったのは、そのふたつだけだった。
キルフは冷たい顔で彼の腕に縋ったクロエの手を、振り払った。
ぱしりと手を打たれ、絶望で視界が歪む。
「私はお前などのものではない。思い上がるな」
冷たい声。