私の彼氏,ちょっぴりクズっぽい,です。
難なくシュートが決まり,2点。

その後もとったり取られたりの攻防を続けながらも,俺たちの優勝は決まったも同然だった。

試合終了直前,ボールは俺達のチームの手の中にある。

ボールを持っていたメンバーは,タイマーを気にする素振りで足を緩めた。

……だめだよ



「それ,ちょーだい。パス」



言いながら,ゴールの他には目も向けず走る。

戸惑ったメンバーを横目にジャンプして,俺は空中で振り向いた。


6·5·4

3

戸惑いが勝っているメンバーからの下手くそなパスを受けて。

2·1

ザシュッッと軽快な音を立てたバスケットゴールが,網を揺らした。

ピーーーーッと言う高音と共に,大きな歓声が体育館を包む。

また最初と同じように並んで



「有馬……だよな? さっきの,何の話だよ」



とーかちゃんがまだ何も知らないと思っている男が言った。

予想通りの反応に,俺は汗を拭う手の甲で薄ら笑いを隠す。

俺が返すのは,質問を全て無視しているようで,全てを簡潔に表すことば。



「九条優菜」



佐久間煌芽は目を見開いた。

どこか焦るような表情で,唇を噛む。



「応援してくれる人がまだ残ってて良かったね。でも……とーかちゃんが泣いた分だけ,後悔すればいいよ」



合図によって頭を下げ,俺はこれ以上は必要ないと歩きだした。

どういうことだって,まだ理解しきれない佐久間煌芽が引き留めてくるけれど。

決勝終わりにごった返す人混みをうまく利用して,俺は佐久間煌芽を撒いた。

とーかちゃんは観客席に立ったまま,結果に驚くように口を覆っている。

悲しんでなんていない,寧ろ喜ぶように頬を赤らめ立っているその姿が,すごく,すごくかわいかった。




          ー有馬響sideー終
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