私の彼氏,ちょっぴりクズっぽい,です。
眩しいくらい,歓声に包まれる響くんが。
いつだって沢山の人に埋もれそうになる私には,とても。
とても,格好いいと思えた。
どくどくと高鳴る心臓はもう,いくら押さえても鳴りやまない。
あんなの,あんなの本当に卑怯だよ。
その卑怯なところすら,響くんらしすぎる。
試合が終わって誰よりも早く移動を始めた響くんは,一瞬,私を見た気がした。
見ていてって。
見てたよ。
応援は俺だけって。
言われなくても,響くんしか見えなかったよ。
あいたい,もっと近く。
こんな遠くの上からじゃなくて,もっと……
「あーもう悔しいっ!! 煌芽もめっちゃ頑張ってたのに~っ。響,どんだけ体力オバケなの!」
むーと声を張り上げているのは,優菜。
ちょっと,ごめんね。
「えっどこいくの桃花」
驚いてるところ,申し訳ないんだけど……
「ちょっと行きたいところがあるの」
今は優菜の話,聞いてあげられない。
悔しいもムカつくもそれでもかっこよくみえた事も,全部後でちゃんと聞くから。
今は近くに行きたい人がいます。