私の彼氏,ちょっぴりクズっぽい,です。






眩しいくらい,歓声に包まれる響くんが。

いつだって沢山の人に埋もれそうになる私には,とても。

とても,格好いいと思えた。

どくどくと高鳴る心臓はもう,いくら押さえても鳴りやまない。

あんなの,あんなの本当に卑怯だよ。

その卑怯なところすら,響くんらしすぎる。

試合が終わって誰よりも早く移動を始めた響くんは,一瞬,私を見た気がした。

見ていてって。

見てたよ。

応援は俺だけって。

言われなくても,響くんしか見えなかったよ。

あいたい,もっと近く。

こんな遠くの上からじゃなくて,もっと……



「あーもう悔しいっ!! 煌芽もめっちゃ頑張ってたのに~っ。響,どんだけ体力オバケなの!」



むーと声を張り上げているのは,優菜。

ちょっと,ごめんね。



「えっどこいくの桃花」



驚いてるところ,申し訳ないんだけど……



「ちょっと行きたいところがあるの」



今は優菜の話,聞いてあげられない。

悔しいもムカつくもそれでもかっこよくみえた事も,全部後でちゃんと聞くから。

今は近くに行きたい人がいます。
< 103 / 143 >

この作品をシェア

pagetop