私の彼氏,ちょっぴりクズっぽい,です。
「で。廊下に筒抜け過ぎて,ほんとは! とかキス拒まれたダサ苛えぴそーどとか全部聞こえてたけど……もう一度言って貰ってもいーい? 佐久間煌芽」

「っだから」

「ああ言わなくていいよ,うざいから。俺が答えてあげる」



そう言うと,響くんは私をぱっと手離して,のしっと乗っかるようにバックハグにチェンジした。

上からの重みで前が見えない。

さらっとしたその行動も,もしかしたらそれを狙っての事かもしれない。

分かりづらいのに伝わってくる。

それが優しさだと言うことも,知っている。



「キス? したよ。"俺が勝手に"。誕生日? "俺と"いたよ。ついでに今日も,とーかちゃんは"俺しか"見てなかったよ」

ーけど。それが,何?



お前に関係あんの? とでも言うような,いきなりの反撃。

全てすらすら肯定して,堂々と。

響くんは,佐久間くんを蚊帳の外に放り投げた。

そっと佐久間くんから離れていた優菜も,余裕そうな声にギクリとして苦笑う。



「当たり前でしょ,佐久間煌芽。とっくに手……は離せなかった変態かもしれないけど,捨てたも同然なんだから。縁をちょんっとしたのは佐久間煌芽なのに,とーかちゃんに何か通すような筋があった? ないよ。だってもう,佐久間煌芽のものじゃないから」



何当然の事言わせてるの,なんて。

あははと笑い飛ばすけど。

そんなもので佐久間くんの羞恥は消えない。

それどころか燃え上がっているのを,後頭部ながら感じた。
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