私の彼氏,ちょっぴりクズっぽい,です。



響くんの触れる眉毛から,じんわりと徐々に表情が緩み崩れた。



「いい人でいるのは楽じゃない。悪い人にならない努力は,楽じゃない。その通りだよ。ただ俺はそもそもいい人になりたいわけじゃないからさ」

ーだから,俺は降りないよ。



響くんは条件の撤回を拒否する。

ぼろぼろと泣く私は何も言葉を返せない。

喉が詰まって,泣きなれてない私は必死に咳き込んだ。

いい人に状況は関係ない,だから,いい人でいるのは楽じゃない。

だからこそいい人なんて捨てて,使えるものを使おうとする響くんと。

一般家庭に生まれ,一般的な良識で善良な人間でいたい,それでも笑う私とでは正反対。

でもほんとは,響くんは響くんでいい人なのではと思ってしまうのは



「怒ってても,いいの……っ? 響くんのことも,かっ……佐久間くんと優菜のこともっ」

「いや,それはいーでしょどう考えても」



軽く答えてしまう響くんが,私を泣かせてくれるから。
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