私の彼氏,ちょっぴりクズっぽい,です。
「ぁ,んーん。ごめんね,そうだよね。何かあるわけなんか無いもんねっ。変なこと言っちゃった」
煌芽くんには何も言わない言わないと,だから泣きそうな顔をするなと。
優菜は両手をぱたぱたと振って,私に笑った。
「桃花」
「ひ,響? なんで急に名前……」
そう戸惑う優菜と同じ。
取り繕うことも嘘をつくことも下手な私は,つい勢い良く顔をあげてしまう。
「何でって,友達だからだよ。今日のお昼,ご飯分けて貰っちゃってさ。やさしーよね。優菜の友達でもあるんでしょ? だったらいーじゃん」
ーそんな気にすること?
嘘ではないが本音ではない。
そんな風に喉につっかえる返事をした響くんは,私の心を器用に守っている。
友達でもあるんでしょ? なんて。
ほんとはすごく責めるような皮肉なのに。
「そ,そうだけど」
ただ言い返せなくする効果を発揮させた響くんに,それでも響くんが私の名前を呼ぶのは嫌なのか,優菜がたじたじと答えた。
優菜の本音って,どこにあるんだろう。
優菜が本当に好きなのは,だれ?
響くん,やっぱり今日。
少しだけ話いいですか?
ぱちりと瞬くと,響くんはいいよといたずらに目元を緩めた。