ヒスイのさがしもの
「え……だ、大丈夫なの? その人、あっ、その神様のところに行って、私、食べられない?」
トウマは、吹き出すように小さく笑った。
「食わないさ。心配するな。ウツギサンは人が嫌いなんだ。食べたりなんか絶対しない」
言われてみれば、嫌いなものは食べたりしない。でも……それはそれで、心配になる。そこまで人間嫌いの神様が、私が帰ることに協力してくれるのだろうか。
「……大丈夫かなぁ……」
「君くらいの人間がひとり現れたくらいで、いちいち取り乱すような神様じゃない」
「うーん……そっかぁ……」
「さっき食われそうになったのは、運が悪かっただけだ。あそこは小さい神様だらけだったから、人間が珍しくて寄ってきたんだろ」
小さい神様、というからには、大きい神様もいるのだろうか。そういえば、龍みたいなのが飛んでいたっけ。
人の姿のトウマは、それこそ人にしか見えない。でも、白い大きな犬、そんな神様もいると思うし、神様なら姿を変えることだってできそうだ。
トウマだって神様かもしれないし、どんな神様かもわからない。人が好きなのか、嫌いなのか。味方なのか、そうじゃないのか。
トウマが本当は何を考えているのか、なんて、わかるわけがないことに思いを馳せた。
その、ときだった。
「えっ……わぁぁっーー!」
足元が崩れて、それからはあっという間だった。
「ヒスイ!」