ヒスイのさがしもの

よもつへぐい




「か、神様、ですか?」

「ええ、もちろん」


 姿の見えない神様は、(おだ)やかに言う。

 敵意はないのだろうか、頼っても大丈夫なのか。神様のことを()(はか)ろうと、一瞬でいろいろなことが頭の中を駆けめぐる。


「わたくしと一緒に来なさいな」


 私の不安を(さっ)したのか、神様はやさしい言葉をこぼした。

 それでも、顔も見えない。真意は当然わからない。不安は(ぬぐ)いきれず、私は返事をしかねてしまう。

 すると、かさかさと軽い音が聞こえて、私の両肩がなにかに包み込まれた。


「え、えっと……」

「大丈夫。取って食べたりしないわよ。ああ、もしかして人間さんは湿った暗闇がお好みなの? それなら無理にとは言わないけれど……」


 湿った暗闇は好んでいない。一刻も早くここから出たい。


「……に、人間は、風通しがよくて日が当たるところの方が好きかもしれません」

「あら、気が合いそうね」

「私はちょっと日陰があるくらいが好きだけど……」

「わたくしもそのくらいの方が好みよ」


 私の肩を包んでいたかみさまは、そのまま私をふわりと抱き上げた。


「それじゃあ、行きましょうか。ちょうどいいところを知っているわ」

「あ、あんまり遠くには行きたくないんです! 一緒にいた人とはぐれちゃって……」

「安心しなさい。奥へ進めば闇は晴れるから」


 葉っぱ同士が(こす)れるような音をたてながら、かみさまは私をどこかへと運んでいく。


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