ヒスイのさがしもの



「そうよね、嫌いなのよね。こんな食べ物ーー」


 神様は腕のようなツタを振り上げ、料理を皿ごと払おうとした。それに気づいた瞬間、私の体は考えるよりも早く動いた。


「だっ、ダメ! もったいない……!」


 両手を広げて、料理を(かば)う。すると、神様は驚いたように目を丸くする。


「嫌いなんかじゃない! 私、食べます……食べても、いいですか?」


 私が言うと神様は目を細めて、うれしそうに微笑んだ。


「もちろんいいわ。あなたのために作ったの」

「それじゃ、いただきます」


 見た目は最高、香りも最高。お(わん)を持ち、口へ運ぶ。味も最高だ。どこか知ってはいるような、あまり馴染(なじ)みのないような、独特な風味を感じる。


「おいしい……! これ、何のスープですか?」

「私の愛するもの。私自身。そんな植物よ」

「神様、自身……?」

「私はね、和蘭芹(おらんだぜり)の神なの」

「おらんだぜり?」

「パセリと言う方が伝わるのかしらね」

「ああ、パセリ! そっか、これ全部パセリなんだ」


 料理を(いろど)る、(あざ)やかな緑。言われてみれば、口に残るのはパセリの風味だということに気づく。

 パセリが主役の料理はなかなか珍しいと思うが、とてもおいしいことを知った。口に運んだ料理はどれも絶品だ。


「ええ、おいしいでしょう?」

「はい、すっごく!」

「うれしいわ、そんなふうに喜んでもらえて。だって人間さんったら、すぐに残して捨てるでしょう?」


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