ヒスイのさがしもの



 残して、捨てる。パセリといえば料理の脇役、付け合わせのイメージが強い。確かに、それを残す人も多いだろう。

 正直、私だって、残しこそしないものの特においしいものだとは思っていなかった。

 なんだかすごく、申し訳ない気持ちになる。


「捨てるなんて、もったいないですよね……。それに、こんなにおいしいのに」

「そうね。あなたみたいな人間さんは大好きよ、わたくし」

「私、元の世界に帰ったら、もっとパセリ食べます!」

「あらあら、そんな……いいのよ。わたくしがいくらでも作ってさしあげるから」

「えっ……」


 パセリの神様は、私の前にゆらりと立つ。自分の中に恐怖心が生まれるのを感じる。


「あなた、帰るつもりなの?」

「は、はい」

「あら、そうだったの。でも、もう忘れなさい」

「ど、どういうーー」

「ずっとここで暮らしたらいいの。わたくし、あなたに会えてとってもうれしいんだから」


 冷や汗が背中を伝う。パセリの神様は、私を帰さないつもりだ。


「それは無理です! 私、行かなきゃーー」

「そんなこと言わないで。ほら、お友達もいるのよ」


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