ヒスイのさがしもの
「はぁ? なんで?」
トウマはあからさまに文句ありげな態度で言う。
「私は、どうせ帰れないから……だったら、助けるならあの子にして」
「帰れないってどういうことだ。ここ、そんなに住み心地がよさそうか?」
「神様のくれたごはん、食べちゃったの。だから、よもつへぐいで……」
「よもつへぐい? ……聞いたことあるな、そんな話。ま、俺はよく知らないから関係ないが。とにかく俺は、ヒスイ、お前を連れていくからな」
不意に、胸が鳴る。それがどんな感情かは決められない。けれどトウマが、他の誰でもなく私を助けに来てくれたことがうれしかった。それだけは確かだ。
「……でも私は、あの子も一緒に連れてってほしい」
照れ隠しをするように、けれど確かな本音をトウマにこぼす。トウマは呆れたように肩をすくめた。
「はー、まだ言うか? ……まぁ、言うよな。おまえがそういう奴だって、もうわかってたさ」
紅ちゃんは鋭い視線をこちらに向けている。それは期待を押し殺しているようにも見えた。
「あなたたち、何を勝手なことを言っているの? どちらの人間さんも、ここから出さないわよ。ああ、もちろんあなただけは帰っていいわ。真神の愛し子さん」
「……知ってるのか、俺のこと」