ヒスイのさがしもの



 パセリの神様のツタで霧が払われる。そこには、犬の耳だけを生やした人間の形のままのトウマがいた。

 トウマは確かめるように耳を押さえる。慌てた様子を見るに、予想外のことが起きているみたいだ。


「あら? あらあら? どうしたのかしら、そんなに焦って」

「トウマ? 犬になれないの!?」

「うるさい……おかしいな、なんでーー」

「ここは私の領域(なわばり)よ? 他の神様は入れない。つまりどういうことか理解したかしら? あなた、私の作った結界を、無理に壊そうとしたでしょう。相当な神力(しんりき)が必要だったはずよ。あなたが変身するぶんも残らないほどにね」


 他の神様は入れないーーつまり、トウマは神様じゃない。でもさっきは、人間でもないみたいな口ぶりだった。

 トウマが何者なのかは結局私にはわからないが、とにかく犬の姿になるには神力というものが必要で、今はそれがないということだろう。

 とりあえず、トウマは追い詰められている状況だ。それだけは私にもわかる。

 パセリの神様は、これ見よがしにツタを伸ばして、トウマの足の周りに這わせる。人間の姿ならいつでも全身を絡めとれるという牽制(けんせい)のようにも思えた。


「あなたは所詮(しょせん)まがいもの。神でも人でもないものね」


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