ヒスイのさがしもの



 トウマは口をつぐむ。言い返さない。その様子から、心が傷ついたことを気づかずにはいられない。


「ーーなっ、なんでもいいでしょ!」

「あら、なに?」


 つい、声を荒げてしまった。この場にいる全員が、驚いたように私を見る。ぞくりと、いやな感覚が全身を走る。注目されている。間違えちゃいけない。汗が滲む。次に何を言うべきか、わからない。

 ーーヘアピン。前髪に手をやるが、そこに私のお守りはない。そうだ、壊れちゃったんだ。あれがないと、やっぱり私は――……そこまで考えて、もう、やめた。

 トウマが、なんだかとても幼く見えた。誰かを探す迷子みたいに。私の言葉を待っている、そんな気がした。だから私は、もう黙っているわけにはいかない。


「ーートウマが何かなんて、なんでもいい! ただ、トウマは、私を助けてくれたから。……私は、トウマを信じてるから!」


 考えずに口から出た言葉は、自分でも何が言いたいのかわからない。でも、とにかく私は、トウマが傷つくのが嫌だった。

 私なんかに信じてもらったからって、トウマはなんとも思わないかもしれない。でもこれ以上、何を言えばよかっただろう。

 私が伝えたいのは、この一言だ。


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