ヒスイのさがしもの
うつぎさん
あのマッチの火は本物じゃない。それを聞いたのは、洞穴から出てすぐのことだった。
「あれは、ある呪いの根源となってたモノだった。つまり特別な代物だ。あの火に実体はない。見かけ倒しもいいところだな」
「そっ、それじゃ、パセリの神様も紅ちゃんも無事ってこと?」
「そうなる」
「よかった……」
「よかった、か……あんな短時間で情が移ったのか?」
情が移ったーーそう言われればそうなのかもしれないけれど、私の気持ちはそんな大層なものではないと思う。
「私は、ただ、紅ちゃんは一人で捕まって心細いだろうし、パセリの神様だって悪い神様には思えないから……だから、ひどい目には合ってほしくないだけだよ」
「なるほど。おまえは自分の余裕がないくせに他人ばかり気にするから結局誰もーー……」
トウマは言いかけて、一度口をつぐむ。それからまた、ゆっくりと口を開いた。
「……俺が助けなかったら、大変なことになってただろ。他人よりまず自分のことを優先することだな」
「それは、うん……ごめん」