ヒスイのさがしもの



「あの、わ、私はーー」

「ヒスイ、だね。知っているよ」


 ウツギさんは優しく微笑む。人間嫌いとは思えない表情だ。


「ヒスイ、私のことは知っているかな?」

「ウツギさんーーですよね。トウマから聞きました」

「……私のことで知っているのは、名だけかい?」


 質問の意図が掴めず、一瞬、言葉に詰まる。

 けれど会ったばかりのウツギさんに情けなく思われたくなくて、どうにか回答を絞り出した。


「……えっと、他には、トウマはウツギさんを頼りにしてるってことは知ってます」

「ーーうん、なるほど」


 なにか答えを間違えたかな。ウツギさんは相づちこそ打ってくれたものの、納得したようには思えなかった。


「ウツギサン、このヒスイという人間をーー」

「待ちなさい、トウマ。先に回収した呪いを」


 ウツギさんに言葉を遮られたトウマは、少し気まずそうに口を開く。


「あー……ーー実は、壊れた。その呪いの根源の、元の持ち主がヒスイなんだ」

「……つまり、ヒスイを現世(うつしよ)に帰し、根源となっている髪飾りを直さなければ、目当ての呪いは回収できないということだね」


 現世ーーというのが、私が元いた世界の呼び名なのだろう。

 ウツギさんは見ても聞いてもいないはずなのに、トウマの言う呪いの根源がヘアピンだと知っているみたいだ。神様だから、何でもお見通しってことかな。


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