ヒスイのさがしもの
ウツギさんが私を呼んだ理由に、心当たりはない。けれどトウマとの会話からするに、私が訊いても答えてくれなさそうだ。それどころか、気まぐれというのだから理由なんてないかもしれない。
なんにしても、帰れることがわかって安心した。
ーーけど。
「でも、まだ帰れないんです。助けたい人がいるから」
「なるほど?」
「俺も、ヒスイが帰るときに一緒に現世へ行かないといけない。そのために神力を養う時間がほしい」
トウマが現世に行くためには、神力が必要になるみたいだ。学校で会ったときに、人の姿のトウマに急に犬の耳が生えたけれど、あれは神力を使って人の姿を保っていたのだろうか。
「……君たち、欲張りだね。私は人助けには手を貸せないよ。神同士で揉めたくないんだ。ところでトウマは、どうして現世に行くのかな」
「ヘアピンーー髪飾りを、直す」
「わざわざ、君が?」
「……俺のせいで壊れたからな」
トウマ、そんな風に思ってたんだ。もちろん私からすればそうだったけれど、いざ認められると、私だって悪かったのにと口を挟みたくなってしまう。
「へえ。それはまた随分と人間らしい。それなら、好きにするといい。……時が来たら、また話しておくれ。いつでも現世へ送ってあげよう」