ヒスイのさがしもの




 ーー少し経ち、私は、小川で上履きと靴下を洗っていた。

 ……ウツギさん、思ったよりも怖くなかったな。でも、話してる間ずっと緊張感はあった。それに、ウツギさんの真意がわからない。どうして私を呼んだのかも、すぐに帰してくれるなんて言うのかも。


「考えても仕方ないよね……」


 ウツギさんと話した後、トウマは神力を養うとか言って、どこかへ行ってしまった。私はウツギさんと二人きりにされてどうしたらいいかわからなかったが、ウツギさんは私の泥だらけの足元を見て、小川があるのを教えてくれた。


『トウマは気が利かないからね』


 ーーなんてウツギさんは言ってたけれど、私は、トウマが意外と優しいことを知っている。

 トウマとウツギさんは、どんな関係なんだろう。友だちという感じではないし、どちらかというと家族っぽい距離感だ。歳の離れたお兄さんとか、逆に歳の近い親子とか。でもそうなると、さん付けで呼んでいるのに違和感がある。

 ……神様なんだから人間と違って、歳とか家族とか、そういう概念はないのかもしれないけど。


 一息ついたとき、ふと辺りを見回して、ここはとても心地よいところだと思った。さっきまで考えごとをしていて気づかなかった。

 小川のせせらぎと木々のざわめきはやさしくて、吹き抜ける風はくすぐったい。きらめく木漏れ日を見ていて、ふと、幼い頃のことを思い出した。


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