ヒスイのさがしもの
ーーあれはまだ小学生になったばかりの頃。皆既日食という、そのときは聞き慣れていない現象が起こる日を、私は楽しみにしていた。
その日、ここと似たような自然の中で、ふと同じような木漏れ日を見てーーいつもは丸いその光のかたちが、欠けているのに気がついたんだ。
それに、光源のかたちがそのまま木漏れ日となるピンホール現象という名前があるのを知ったのは、ずいぶん後になってからだ。
いつもと違う、特別なきらめき。それは幼い頃の自分にとって、まるで宝物を見つけたみたいにうれしかったのを覚えている。
ーーそこまで考えて、それを見たとき、誰かと一緒だったような気がした。
けれど、思い出せない。本当に誰かと一緒にいたのかさえ、さだかじゃない。幽世であるこの場所とよく似た、記憶の中の景色がどこなのかもわからない。
ここはかみさまのせかいのはずなのに、不思議と懐かしさが漂っている。よく似たあの場所を思い出せそうなのに、記憶の中を探ってもあと少しのところでこの手をすり抜けていってしまう。
……それが気持ち悪くて、考えるのをやめた。幼い頃の記憶なんて合っているかもわからないし、本当に忘れてしまっただけかもしれない。
洗い終えた上履きと靴下を手に、立ち上がる。ウツギさんから渡された草履は、初めて履いたが意外と歩きやすかった。