ヒスイのさがしもの
「愛情? へえ、愛ね。その、君が言う愛こそ、最上級の呪いだ」
愛が、呪い? そんなわけない。お母さんはいつだって、私の幸せを思ってくれていた。
「愛は、愛だよ……」
消えそうな声で言う。愛は呪い、なんて言う男の子に、うまく説明するだけの言葉が思いつかなかった。
「……つまらない話は、やめだ。とにかく、あのヘアピンに呪いはこもってた。これは絶対、確実にな。君みたいな普通の人間にはわからないだけだ」
「ふ、普通の人間って、あなただってーー」
なにか言い返そうとしたが、言葉が浮かばなかった。目の前の男の子が普通の人間のわけがない。犬になるし。
「俺が普通の人間に見えるか? それはありがたいことだ。で、これからどうするかだな……」
「……ヘアピン、直したい」
「ーーあのな、もちろん俺だって直したいよ。あれだけの呪いを見過ごしたくない。でも無理だ」
わかってる。わかってる、そんなの。今こんな状況で直せないし、それどころじゃないことも。でも、ヘアピンがないと私は不安な気持ちをどう処理したらいいかわからない。
つい、涙をこぼした。泣きたくなんかないけど、勝手に出る。それを手でぬぐったとき、肩を触れられた。