ヒスイのさがしもの
「……無理って言ったが、それは『今すぐには』って意味だからな。直す気がないとは言ってない」
……ぶっきらぼうでひねくれたその言葉。でも、不思議とうれしかった。男の子が、初めて歩み寄ってくれた気がした。私より少し大きい男の子の手が、今は唯一の頼りなんだ。
「とにかく君は元の世界にーーというか、こっちに来て、よくそんな平気な顔でいられるな?」
『こっち』……そうだ、そもそもここはどこなんだろう。言い争いなんかしてる場合じゃなかった。そっと触れた地面は、砂かと思っていたが違う。ふわっとしていて、手のひらを押し込めばどこまでも沈みそうだ。変な感覚。
「ここ、どこなの……?」
男の子は空を見上げ、言う。
「ここは、『かみさまのせかい』だ」
男の子の視線を追うと、空にはなにかが飛んでいる。それはおとぎ話の龍にも似ていた。
龍が口を開いて、鳴く。大きくはないけれど、脳の奥まで響くような不思議な声。それに呼応するかのように、近くの軒先に吊るされた提灯が辺りを照らす。
ぱ、ぱ、ぱっ。ぱ、ぱ、ぱっ。
並んだ提灯は順番に明かりをともしていく。そして建物から、見たことのない生物たちが顔を出した。