好き勝手されるのは癪なので、貴様らは絶対に許しません ~という令嬢の報復~
「貴方、お父さまですね?」

「な、何を言っているんだ。私はそんなお父様などという名前ではない!」

「そりゃそうでしょうよ、そんな人いません。私が言いたいのは、私を屋敷から追い出した父親かと聞いているんです」

「何を言っているのかわからないな。父親かどうかだって? その様子だと少女よ、君はどうやら家を追い出されたようだが。初対面の私を父親かどうかを聞くとは、やはり未練があるのではないかな? しかし、それは仕方のないことだ、年頃の女子である以上父親を求めてしまうのはどうしようもないことなんだ」

「いや、意味がわかりませんし、お父さまですよね? こんなとこで一体何やってるんです? 人のことを家から追い出しておいて何を油を売っていると言うんですか?」

「しつこいぞ、少女よ。だが人寂しく父親を求めるというのは……」

「知り合いじゃなかったら、それで良いです。……すいません! ここに不審者がいるんですが!」

「ちょっと!? いや、やめたまえ! わかったわかった、今回だけは君の父親ということにしておいてやろう。頼むから話を聞いてくれ!」

 一体何なんなのよ?
 わけのわからない茶番に付き合うほど、正直暇じゃない。いや、休みだけれど。
 あんまりこんなのに関わりたくない。

「分かりました。じゃあ三分間だけ」

「うむ、見ず知らずの人間にも耳を傾ける。実に殊勝な心がけだな、親の教育がさぞかしよかったのだろうな。ははははは!」

 イラっ。

「では三分経ちましたのでこれにて失礼します。おそらくもう二度と会うこともないでしょう」

「ま、待ちたまえ! まだ一分も経ってはいないぞ、約束を反故にするとはよくない。……本題に入るから聞いてくれ!」

 必死に縋ってくる男、いやお父様、いやもうおっさんでいいや。
 このいやに馴れ馴れしく、気味の悪い覆面のおっさんの相手なんぞ、なんでわざわざ貴重な休日にしなければないらないというのか?

 ……私この男と血が繋がってるんですよ? やだぁ。
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