好き勝手されるのは癪なので、貴様らは絶対に許しません ~という令嬢の報復~
 そこでふと思い出した。
 そういえば、長年ランブレッタ家に仕えるメイド長のレンレンさんから聞いた事がある。
 父は過去にニ度、半殺しにされた事があるらしい。
 一度目は私のお母様との浮気がバレて、当時婚約者だったママ上様に……。
 二度目は妹が生まれた際、男児が生まれたと勘違いしてボルディの名前で勝手に届け出を出してママ上様に……。

 それでいけば今回も。

「ママ上様にボコボコにされたんですね」

「ち、違うぞ! 何を言ってるんだお前は!? 娘を利用する為に家から追い出した事がバレて激怒した妻に一方的にやられるなど、お前と血の繋がった男がそんな情けないはずがない、居るわけがないだろうそんな男が!!」

 居るじゃないか、私の目の前に。

「……ふーん、そうなの。お父様はお強いのねぇ」

「そうだとも。私は昔、若い頃はそれはもう強かったのだ。今では牙を休ませているが、断じて妻の尻に敷かれてなどいない!」

 そう断言するも、判別出来ない程に変形した顔面では一切の説得力が無い。
 ……私この男と血が繋がってるんですよ? やだぁ。

 私の冷えた視線を受けてか、さらなる弁解をすべく私の肩を掴んだ。

「ま、待て! これはな、人工魔物が出た際に、お前が戦いやすいようにわざとああいう手段をとったのだ! 私も実の娘を追い出すのは辛かったのだ!!」

「あら、まあ。素敵! 流石はお父様ね! 娘の事をそこまで想ってくれているなんて感激ですわ。……ああ、元でしたわね。申し訳ありません。では今後は他人という事で、……さようなら」

「ま、待つんだ!? 仕方なかったのだ! 婚約も破棄されたし、口実として渡りに船だったのだ!!」

 そう言って、その場を離れようとする私を引き止める為に肩を掴むおっさん。
 この場合、不審者に対する対応は決まっている。

「きゃあ!」

 私は悲鳴声を目いっぱいに上げて相手のボディーにレバーブローを決める。
 
「ぐべわ!?」

 肝臓周辺に深い衝撃を与えられた不審者のおっさんはそのまま泡を吹いて倒れた。
 ああスッキリした! これは特に関係無いけど、巻き込まれてしまったミエラ君の分だ。
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