王子がお家に住み着いた!
「······う、そ···なんで····」
「おめでとうって言ってくれないの?」

ふふ、と笑ったその男性はどこからどう見てもルイーズ王子その人だった。

「髪が、黒くて、でも、今は銀に···」
「色変えの魔法がかかった特別製の仮面だからね、でも声とかは変えてないのにここまで気付かれないとちょっと悲しいなぁ」
「うっ」

振りかえってみれば、声も態度も話し方もルイス殿下そのものだった気がする···が、パニックになっていたのだから仕方ない。多分。

と、いうか、目の前の男性がルイス殿下だとしたら。


“私の想いを寄せる相手”
“助けてルイス王子”


自分の口から出た失言に青くなればいいのか赤くなればいいのかわからない。
バレた。
こんなの告白したようなものじゃないか。
思わず目頭が熱くなる。

どうしよう、どうしようどうしよう、どうしよう····

「エーメ、おめでとうは?」

こつんと額と額をくっ付けてきた王子は、涙目になった私に気付いたのか一瞬息を飲んだ気配がして。

「あ、へ!?」
「味はしないな」

ちゅ、と涙に吸い付いた。


「な、な!?なな!?!?」
「エメが祝ってくれなくても、私もやっと成人したんだよねぇ?」

はくはくと口を動かすが何も言葉にならない。

「つまり、大人の仲間入りだ」

にこりと笑った王子は、そっと私の肩に体重をかけてのしかかる。
王子の銀髪がさらりと頬を擽り、射貫くように見つめる瞳はルビーのよう。
それはあの日私が想像したままで。


「帰らなくてはいけない理由がここにいるなら、まだ帰らなくてもいいでしょう?」

その言葉が耳に届くのと同時に、私の口は殿下の唇によって塞がれた。

くちゅ、と室内に響く水音に頭が沸騰しそうになる。

これは何?
いつもの添い寝?
私がドレスを着てないのは介抱の為だし···
でも私の気持ちはバレてしまって···

そして何より今、キスを交わしてる···?


この非現実的な状況に、そしてルイス殿下にこのまま全て委ねたくなる。

「ーーんっ、はっ」

ちゅくちゅくと舌で口内をかき混ぜられ、どんどん体が熱くなった時だった。



『でも、エメが2人の殿下から相手を選んだら、選んだ王子が次期国王になるわね』


リリーの言った一言を唐突に思い出し、まるで頭をハンマーで殴られたような衝撃を感じる。

そうだ、私には“利用価値”がある····
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