王子がお家に住み着いた!
私はこの国の唯一の公女。
そして第一王子の婚約者。

いつまでもこうしている事は出来ない。
舞踏会から返ってこないと家族も心配するだろうし、朝帰りをあまり見られるのも今後のために良くはないだろう。


“もしかしたらルイスが連絡してくれているかも”とは思ったが、それはそれでルイスと夜を過ごした事があからさま過ぎて恥ずかしいー···

「いや、毎日一緒だったからそれは今更かしら···?」

思わずそう呟くが、毎日一緒に寝ていたと知っているのはライス公爵家の者達だけだ。
そしてルイスの私室があるということはここは王宮。
王宮から帰る姿を見られるのも在らぬ噂を招く可能性があるーー····。


一通り葛藤し、名残惜しい気持ちを残しつつ、これからの事を改めて家族と相談しなくてはならないから、とルイスに向き直る。


「私はそろそろ帰らせて頂きますわ」
「どうして?」
「ど···っ、どうしてと申されましても···」

にこにこと微笑むルイスに少し怯む。
しかし帰らない訳にはいかない。

「これからの事を父とも相談しなくてはなりませんし···」

おずおずとそう伝えると、こくりと頷いたルイスはベッドから降りた。

「そうだね。でも体もしんどいでしょう?支えるから一緒に行こうか」

ベッドサイドまで移動し、手を差し伸べてくれるルイスは本当に格好良いーーーの、だが。


「·····あの、一応念のためお伺いいたしますが、ルイスは父に会った後はまたこの部屋にお戻りになられるのですよね?」

お人形から婚約者になったのだ。
また昨日のような営みがある可能性もある、そしてもし頻繁に昨日のような夜を過ごすとしたら····

“絶対私の身体がもたないわ···!”

なんとしても、絶対本当になにがなんでも王子にはこの私室、つまりは王宮へ帰って貰わなくてはならない!!と、決意したのだが。

「もちろんだよ、この部屋は私の部屋だからね」

なんてあっさり返され拍子抜けする。


“そ、そうよね、いくら婚約者になったと言っても同じ部屋で毎晩寝るのはまだ早い···わよね?いや、お人形としてなら一緒に寝てたけど···”

少しぽかんとしつつも、どこかほっとした私は帰る為にまずは着替える事にした。
キョロキョロと昨日身につけていたドレスを探すが見当たらない。

そんな様子に気付いたルイスは、すぐにメイドを呼んでくれると言ってくれ······
< 19 / 21 >

この作品をシェア

pagetop