王子がお家に住み着いた!
「エメ、私の誕生日覚えてる?」
おもむろにそんな言葉を投げられ思わず振り向く。
「もちろんです、明日が殿下の20歳の誕生日ですわ。殿下の成人祭は来週を予定しているということもしっかり記憶しております」
「覚えていてくれて嬉しいよ。ねぇ、エメに一番に誕生日を祝って欲しいんだけどいいかな?」
そんなことを改めて聞かれて思わずぽかんとしてしまう。
祝うも何も、ここが私の私室で私の私室に殿下は住んでいるのだ。
どう転んでも私が一番に祝う事になるのは明白。
そこまで考えて、ふと気付く。
つまり、殿下は···
「畏まりました。必ず一番にお祝い申し上げますわ」
“ちゃんと帰って来てね!”って言ってるのね!?!?
そう結論付けて思わず頬が弛んだ。
先ほどまで重く感じた仮面の重さはもう感じない。
ころっと機嫌が直ってしまった私は、軽やかに「すぐに帰って参りますから!」と部屋から出たのだった。
その時、天幕に隠れた殿下の表情は見えなかった。
そして体験する初めての仮面舞踏会。
私の側にはもちろんリリーが········いなかった。
「甘かったわ···」
思わずため息が漏れる。
サバサバしたハッキリキッパリ男らしいリリー。
サクッと好みの男性を見つけた彼女は、「ごっめんね!でもこの机のとこがセーフティゾーンだから!私だと思ってかじりついてて!」と、にこやかに友情と恋を天秤にかけあっさりと恋を取ったのだ。
リリーの言った通り、立食テーブルでの声かけはマナー違反とされているらしくこの机の近くにいる限り誰からも声をかけられる事はなかった。
それでなくても、あっさり捨てられた腹いせに、とガツガツ料理を食べ続けている令嬢なんて声をかけたくはないだろうが。
一人くらいとはダンスを踊ってみようかな、と思ったのだがなんとなくそんな気分にもならなかったのでひたすら食に走った。
まさか公女がこんなにガツガツ食べ漁ってるとも思わないだろうし、身分も隠せて一石二鳥だ。
「もう帰ろうかな···」
帰ったら殿下が待っていてくれている。
どうせ今日もいつも通り添い寝だけ。
それでも私に一番に祝って欲しいと言ってくれた。
なんだか無性にルイーズ王子の顔が見たくなり、セーフティゾーンであるテーブルから移動しようとした時だった。
「··············う、ぅぐ」
セーフティゾーンだったはずの立食テーブルは、コルセットで絞められた令嬢の胃袋にとってある意味セーフティとは反対の位置に属していた。
移動しようと体を捻ったせいで変に力が入ったせいか、ものすごくさっきの食べ物達が体内を右往左往している。
ヤバイ。これはヤバイ。かなりヤバイ。
「失礼、顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
優しげな声と共に漆黒の髪が目に飛び込んできた。
「あ、貴方は···?」
「いけませんよ、お嬢様。ここは仮面舞踏会なんですから」
ふふふ、と笑いながら差しのべられた手に何故か自然と手を重ねた私は、絞められたコルセットの苦しさからそのまま気を失ってしまった。
おもむろにそんな言葉を投げられ思わず振り向く。
「もちろんです、明日が殿下の20歳の誕生日ですわ。殿下の成人祭は来週を予定しているということもしっかり記憶しております」
「覚えていてくれて嬉しいよ。ねぇ、エメに一番に誕生日を祝って欲しいんだけどいいかな?」
そんなことを改めて聞かれて思わずぽかんとしてしまう。
祝うも何も、ここが私の私室で私の私室に殿下は住んでいるのだ。
どう転んでも私が一番に祝う事になるのは明白。
そこまで考えて、ふと気付く。
つまり、殿下は···
「畏まりました。必ず一番にお祝い申し上げますわ」
“ちゃんと帰って来てね!”って言ってるのね!?!?
そう結論付けて思わず頬が弛んだ。
先ほどまで重く感じた仮面の重さはもう感じない。
ころっと機嫌が直ってしまった私は、軽やかに「すぐに帰って参りますから!」と部屋から出たのだった。
その時、天幕に隠れた殿下の表情は見えなかった。
そして体験する初めての仮面舞踏会。
私の側にはもちろんリリーが········いなかった。
「甘かったわ···」
思わずため息が漏れる。
サバサバしたハッキリキッパリ男らしいリリー。
サクッと好みの男性を見つけた彼女は、「ごっめんね!でもこの机のとこがセーフティゾーンだから!私だと思ってかじりついてて!」と、にこやかに友情と恋を天秤にかけあっさりと恋を取ったのだ。
リリーの言った通り、立食テーブルでの声かけはマナー違反とされているらしくこの机の近くにいる限り誰からも声をかけられる事はなかった。
それでなくても、あっさり捨てられた腹いせに、とガツガツ料理を食べ続けている令嬢なんて声をかけたくはないだろうが。
一人くらいとはダンスを踊ってみようかな、と思ったのだがなんとなくそんな気分にもならなかったのでひたすら食に走った。
まさか公女がこんなにガツガツ食べ漁ってるとも思わないだろうし、身分も隠せて一石二鳥だ。
「もう帰ろうかな···」
帰ったら殿下が待っていてくれている。
どうせ今日もいつも通り添い寝だけ。
それでも私に一番に祝って欲しいと言ってくれた。
なんだか無性にルイーズ王子の顔が見たくなり、セーフティゾーンであるテーブルから移動しようとした時だった。
「··············う、ぅぐ」
セーフティゾーンだったはずの立食テーブルは、コルセットで絞められた令嬢の胃袋にとってある意味セーフティとは反対の位置に属していた。
移動しようと体を捻ったせいで変に力が入ったせいか、ものすごくさっきの食べ物達が体内を右往左往している。
ヤバイ。これはヤバイ。かなりヤバイ。
「失礼、顔色が悪いようですが大丈夫ですか?」
優しげな声と共に漆黒の髪が目に飛び込んできた。
「あ、貴方は···?」
「いけませんよ、お嬢様。ここは仮面舞踏会なんですから」
ふふふ、と笑いながら差しのべられた手に何故か自然と手を重ねた私は、絞められたコルセットの苦しさからそのまま気を失ってしまった。