宛先不明の伝書鳩
届け主の顔も出身も性格も名前もわからないけれど、届主は誠実な人なのかもしれない。
一番初めの手紙は『君の心を込めて縫ってくれたハンカチ本当にありがとう。君は昔から手先が器用で、素敵な女性だったね』と書かれていた。当時、本当に私が口説かれているのではないかと錯覚した。
だが、次の文章で『君の温かな愛は僕を救ってくれる』と書いてあって、これは恋人に向けた手紙で宛先間違いをしているのだと感じた。
いつもちょっとしたことを話し、最後は『愛しています』で締めくくる。
『今日は夕焼けが綺麗だったから、君も見ていると嬉しい』だったり、『はやく故郷に帰って君と会いたい』だったり小さな愛を伝えてくれる人だった。
会って、少し話して手紙をお返ししたい。
なんだってこんな素敵な文章を私が持っていても申し訳ない。
それに本当に好きになってしまうかもしれない。