宛先不明の伝書鳩
ビンスの兄はずっと士官学校に行っていて幼い時の記憶しかない。

ただなんだかんだ面倒見がよく、遊んでくれた記憶がある。名はなんといったか、シグだったと思う。
ビンスは愛嬌のあるおばさん似だが、シグは父親似で極めて端正なお顔立ちである。

よくビンスが女子に持てるのはいつも兄貴だと嘆いていた。

戦争に参戦すると決まったシグを思いおばさんが涙目でこの言葉をいれてほしいとハンカチを持ってきたのだ。『一生愛してる』いつ死んでもおかしくないからこその言葉にうるうるしながらリリーは一針一針思いをこめて縫ったのだ。

おばさんはちゃんと渡せたよ、あるがとうといってたんまりおばさんお手製のケーキやら燻製のベーコンを持ってきてくれた。そしておばさんが口コミで広めてくれたのだ。その結果、遠く離れた大事な人への贈り物の一つとしてプレゼントされることになったのだ。
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