宛先不明の伝書鳩
「リリー!!」
そのあまりの声の大きさにびくっと身体が震えた。思わず針を指に刺してしまうところだった。大きく手を振ってこっちに興奮したように顔を赤らめて走ってきた。
リリーは思わずビンスを窘めた。
「ちょっと、びっくりしたじゃない。そんなに声を張りあげなくても聞こえているわ」
迷惑そうにいうと、はぁはぁと息切れをしたビンスは手をオーバーに広げながらリリーに訴えた。
「いや、だって小競り合いが休戦して兄貴たちが帰ってくるんだよ!!」
「……お兄ちゃん達が?」
思わずぼとり、と持っていたハンカチを落とした。