月のない夜に永遠の愛を誓い
それにしてもあたし以外にも花嫁候補いるんならその人と結婚すりゃあいいじゃん。
いまいち納得いかないあたしは、クレアに聞くことにした。
「クレア、花嫁候補って本当にあたしでもいいの?」
その問いにクレアは驚いたような顔をしてた。
「ゼルから何も聞いてないの!?」
……いや、大事なことどころか人の血をつまみ食いするやつだよ?
「ん〜、まぁしょうがないわね。花嫁候補は自分が気に入らなければ自分から探しにいってもいいの。 ウ゛ァンパイアの女性が普通なんだけど、紫音みたいな人間はじつは他に例がないのよ。よっぽどいい人いなかったのかしら」
クレアは形のいい眉をひそめながら説明した。
あぁ〜あ、ようするにあたしは身代わりってわけ。
クレアは“それじゃあ長居しちゃ悪いから”なんていって、部屋から立ち去った。
ひとりになり、何もすることがないので部屋の大きな窓を眺めた。
初めて見る外の世界。
この世界の月は地球で見る月よりはるかに大きく、手をかざしたら届きそうなほどだった。
……このときはまだ知らなかった。
ゼルがあたしを連れてきた本当のわけを。