いらっしゃいませ幽霊さん
 店は意外と広く、たくさんの客が入るので、2人で役割を分担しても運営が困難だ。なのに初季は今まで全て1人でやってきたのだ。なんてすごい人なんだろう。
 「お待たせしました」
 
 ひと通り運び終えると、店全体を見渡した。お客さんはみんな笑顔で楽しく食事をしている。だが、妙なのはときどきおかしな服装をしている人がいることだ。着物や、武士のような服、軍服を着ている人だっている。近くでコスプレ大会でもやっているのだろうか。

 そして、何よりおかしいのが客の会話だ。
「あの時は空襲がひどくてなぁ」
「私は主人が武士でして…」
「1840年ごろの話なんだけど、…」
「わしは去年がんになってしまって…」
「あら、それはお気の毒でしたね…」
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