いらっしゃいませ幽霊さん
 4時になると店は閉店した。今まで初季が1人で運営していたため、夜の時間までやるのは難しかったようだ。6月だから日が沈むのは遅いはずなのに森は相変わらず薄暗かった。私が1日学校を無断欠席したくらいで誰も心配はしないだろう。私なんて空気同然だったのだから。

「おつかれ」
キッチンから戻った初季が、オレンジジュースを持ってきてくれた。

「初めての仕事、疲れた?」
「…疲れたっていうより…なんかね」
「まぁ、亡くなった人が相手だからな。まだ頭が追いつかないだろ」
「うん、それもあるんだけど、自分がどれだけわがままだったか気づいたの」

 みんな、もっと長く生きたかったとか、まだ死にたくなかったとか言っているのに、私は死にたいと口癖のように言っていた。命の大切さも知らずに。明日があることがどれだけ幸せなことなのかわかっていなかったんだ。
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