いらっしゃいませ幽霊さん
 初季はため息をつくと、呆れたように口を開いた。

「あの、千切りってわかります?」
「…わかります」
「ちょっと貸して」

 初季は私から包丁をひったくるように取ると、プロのようにキャベツを切り始めた。千切りって、こんな高速でやるんだ…。しかもキャベツはすべて等間隔で綺麗に切られていた。ただ眺めていると、初季が包丁を渡してきた。

「はい、あとは練習あるのみ」
「えっ…ちょっと待ってよ!どうやるの?」
「はぁ…」

 呆れられたと思って俯いていると、包丁を持つ私の手の上に初季の手が重なった。あまりの距離の近さと、密着している手に緊張して固まってしまった。
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