いらっしゃいませ幽霊さん
「だいたい1ミリくらいの細さで、こうやってまな板と包丁の距離を近づけて切ってくんだ」

私でもわかるようにゆっくりと教えてくれる初季は、強い口調の中の優しさが隠しきれてなかった。

「…ありがとう」
「え?いや、お礼はいいから練習して」
「あ、はい」

 それからというもの、毎日料理の練習を初季と一緒にすることになった。死者が来る料理屋だけれど、そこは意外にも居心地が良かった。お客さんの話を聞くのも楽しいし、何より初季の優しさに触れられることが嬉しかった。ときどき夜にこっそり料理の練習をしているけど、実は初季が柱の向こうで見守っていることも知っていた。何年ぶりかに、人の優しさに包まれていることが嬉しかった。
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