いらっしゃいませ幽霊さん
そんなネガティブ思考で頭がいっぱいになっていると、どこかからいい匂いがした。何か温かい料理の…。

　私は匂いにつられてゆっくりと歩き始めた。すると、オレンジの明かりがみえた。家だ。木でできた2階建ての家。
「わぁ…いい匂い」
近くまで来ると看板が見えた。

『天上亭』

「料理屋さんかな？」

お金は少ししか持ってないけど、空腹には耐えられず、中に入ることにした。

　木の扉を開けると、そこには机や椅子が綺麗に並べられた、明るく、温かい空間があった。

「すみません、営業時間は…」

奥から整った顔立ちの男の人がでてきた。私より少し年上のようだ。その人は私を見ると目を丸くした。雨に濡れている私を見て驚いたのだろう。

「さっきまで雨がひどくて…濡れてしまって」
「え……」
なぜそんなに驚くのだろうか。私はなんだか気まずくなって黙り込んでしまった。
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