いらっしゃいませ幽霊さん
「今帰ったらクマに襲われるぞ」
「大丈夫、離して」

いっそクマに襲われて死にたいくらいだ。手を振り払おうとすると、さらに強く掴まれた。

「雨に濡れるってことは、人間なんだろ?」
「え?」

人間?私が?人間に決まってる。やっぱりこの人おかしい。どうしよう。こいつきっと人じゃない。幽霊かなんかだ。こわい。

「離してよ!」
「大丈夫だ、俺は人間だ」
「やめて!」
「落ち着けって、お前も逃げて来たんだろ?」

…え?逃げて来た?

「お前も、現実から逃げて来たんだろ?」
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