前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
『陛下。俺の名前は――』
「カイ……」
アリーセは――ルティアは男の教えてくれた名前を胸に呟き、目を覚ました。
そうだ。あの奴隷の男と自分は殺されるより前に出会っていた。あんなにも穏やかな昼下がりに……。
(でも、最後にはあの男に殺された……)
きっとそれだけのことをしたのだろう。アリーセの暴挙に怒り、憎しみから胸に剣を突き刺して……。殺されても仕方がない。
(でもまさか、彼まで生まれ変わっているなんて……)
しかもリーヴェスといる時と再会するとはなんて運命だろうか――そこまで考え、ルティアははたと気づき、次の瞬間がばりと跳ね起きた。
(そうだ。わたし、王宮の舞踏会に参加していたはずよね!? それなのにどうみてもここは……)
天蓋付きの広い寝台。どれも重厚な作りをした茶系の家具に、ガラスを贅沢に使用したバルコニーへ続く扉はルティアの部屋にはないものだった。
「ここ、どこなの……」
ルティアが途方に暮れた声で呟くと、部屋の外が何やら騒がしいのに気づいた。そうだ。わからないのならば確かめに行けばいい。そう思って寝台を下りようとした瞬間、「お待ちください!」という声と共に扉が勢いよく開けられた。
相手はルティアを見ると驚いたように青い瞳を見開いたが、やがて破顔した。
「目を覚ましたんだな、ルティア嬢!」
「あなたは……」
「殿下! 未婚のご令嬢の部屋に勝手に押し入るのはやめてください!」
自分を殺した男が嬉しそうに自分の目の前にいる。それだけでも十分驚くことなのにルティアは「殿下」という言葉に耳を疑った。
(まさかこの人は……)
「ついこの間帰国された第三王子――テオバルト殿下、ですか?」
おそるおそる尋ねたルティアに、テオバルトは子どものような無邪気な笑みで正解だと告げた。
「カイ……」
アリーセは――ルティアは男の教えてくれた名前を胸に呟き、目を覚ました。
そうだ。あの奴隷の男と自分は殺されるより前に出会っていた。あんなにも穏やかな昼下がりに……。
(でも、最後にはあの男に殺された……)
きっとそれだけのことをしたのだろう。アリーセの暴挙に怒り、憎しみから胸に剣を突き刺して……。殺されても仕方がない。
(でもまさか、彼まで生まれ変わっているなんて……)
しかもリーヴェスといる時と再会するとはなんて運命だろうか――そこまで考え、ルティアははたと気づき、次の瞬間がばりと跳ね起きた。
(そうだ。わたし、王宮の舞踏会に参加していたはずよね!? それなのにどうみてもここは……)
天蓋付きの広い寝台。どれも重厚な作りをした茶系の家具に、ガラスを贅沢に使用したバルコニーへ続く扉はルティアの部屋にはないものだった。
「ここ、どこなの……」
ルティアが途方に暮れた声で呟くと、部屋の外が何やら騒がしいのに気づいた。そうだ。わからないのならば確かめに行けばいい。そう思って寝台を下りようとした瞬間、「お待ちください!」という声と共に扉が勢いよく開けられた。
相手はルティアを見ると驚いたように青い瞳を見開いたが、やがて破顔した。
「目を覚ましたんだな、ルティア嬢!」
「あなたは……」
「殿下! 未婚のご令嬢の部屋に勝手に押し入るのはやめてください!」
自分を殺した男が嬉しそうに自分の目の前にいる。それだけでも十分驚くことなのにルティアは「殿下」という言葉に耳を疑った。
(まさかこの人は……)
「ついこの間帰国された第三王子――テオバルト殿下、ですか?」
おそるおそる尋ねたルティアに、テオバルトは子どものような無邪気な笑みで正解だと告げた。