前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ

13、王子に生まれ変わった奴隷

「あなたはあの後、俺の顔を見た瞬間気絶したんだ。その後もいろいろあったんだが、ひとまず大事を取って王宮で休ませることにした。それで今、あなたは無事に目を覚ましたというわけだ」
「そ、そうだったんですね……」

 侍女、と思われる中年女性に首根っこを掴まれて一度部屋を退出させられたテオバルトは、ルティアの身支度が済んだ後、改めて状況を説明してくれた。

「ご迷惑をおかけしまして、本当に申し訳ございませんでした」
「いや、いいんだ。気にしていないから、どうか頭を上げてくれ」

 言われたとおり、ルティアはゆっくりと顔を上げた。向かいの椅子に座るテオバルトは真っ直ぐとルティアを見つめており、彼女もまた、彼の顔をじっと見つめ返した。

 意思の強そうな太い眉に、青い瞳は自分の色より濃く、深い海の色。鼻筋は綺麗に通っており、唇は厚く、これから楽しいことが起こるとばかりに弧を描いている。

(あぁ……)

 同じだ。あの時の記憶と変わらぬ姿が眼の前にあった。

(でもまさか王子に生まれ変わっているなんて!)

「そんなに見つめられると、少し照れるな」

 ルティアはハッとして、慌てて俯いた。

「失礼しました」
「別に構わない。自分でも顔は整っている方だと自負している」

(……相変わらず)

 自分に自信があるのだな、と少しの呆れとおかしいと思う気持ちが込み上げる。

 前世の彼も、妙に自信家だったのだ。身分は大きく違っても中身は似ているのだと思いながら顔を上げれば、テオバルトは待っていたというように目を細めた。

「それにあなたが俺を見ている限り、俺もあなたを見続けることができる。あなたは、とても美しい」

 ルティアはしばし口を閉ざした。そして柔らかい表情で告げられた言葉の意味をゆっくり理解していくと、カッと頬が熱くなり、膝の上に置いていた手をぎゅっと痛いほど握りしめた。

「あ、また俯いてしまった。もっとよく見せてくれ」
「か、揶揄わないでください!」

 羞恥心からつい怒ったように返せば、テオバルトは真面目な顔をして首を傾げた。

「揶揄う? 俺はただ事実を述べただけだが」
「わ、わたしはっ……」
「あなたは俺が今まで会ってきた女性の中で、誰よりも美しい。心惹かれる存在だ」

 あまりにも堂々と賛辞するテオバルトの顔をルティアは呆然と見つめる。

(彼はこんなこと、言う人だったの……?)

 いや、生まれ変わっているのだから、多少性格に違いは出よう。それでも、やはり戸惑ってしまう。記憶があるからこそ、いや、記憶がなくても、テオバルトの言動は突拍子がない。

(そもそも彼に記憶はあるのかしら)

「あの、あなたは……」

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