前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
18、告白
「ここであなたと初めて出会った」
月明かりに照らされたテオバルトの顔をルティアはそっと見上げる。彼もまたこちらに目を向ける。
「覚えているか?」
「ええ。忘れることなんてできません」
まるで雷に打たれたかのような衝撃だった。
「あなたを一目見た時から、目が離せなかった」
「……わたしもです」」
前世で自分を殺した男と再会するなんて、思いもしなかった。
「その後気絶してしまうから、大いに焦った」
「驚いてしまったんです……」
「俺を見て?」
指をなぞるように撫でられ、逃げるように手を引こうとしても、絡めとられて、くすぐったさと甘い疼きを呼び起こそうとする。
「ええ……あなたに会ってから、わたしには予想外のことばかりです」
ずっと感じていた視線に応えるように顔を上げ、困ったように微笑んだ。
「テオバルト様。わたし、おかしいんですわ」
「何がおかしい」
「何もかも、です」
殺した相手を、ちっとも怖いと思わないのだ。
断片的な記憶が見せてくれる笑顔のせいだろうか。それでも最期には「許さない」という言葉と共に彼はルティアを剣で突き刺した。
普通なら怖くてたまらないはずなのに……
「あなたに会う度、わたしの心臓はずっと忙しなくて、ちっとも落ち着きません。あなたのことを考えると、胸が苦しくなって、屈託ない笑顔にわたしまで嬉しくなってしまって、別れの時間が来ると、とても寂しくて、次も会えるかどうか、不安でたまらなくなってしまうんです」
ルティアの告白を黙って聞いていたテオバルトはそっとルティアを抱き寄せた。
「それのどこがおかしい。あなたは俺に惹かれているだけだ」
テオバルトらしい答え方に、ルティアは笑い、彼の大きな身体に体重を預けた。
「ええ。わたしはあなたに惹かれている。――あなたが好きなんです」
どんな理由でもいい。
今の自分はテオバルトに惹かれている。
前世は関係ない。ふとした瞬間に記憶が蘇って、今と比べてしまうこともあるけれど、カイとテオバルトは違う。
(テオバルト様は、今を生きている)
それはリーヴェスが前世の話ばかりしたがるから余計に感じた差異だった。彼は自分を通して、女王アリーセを見ている。だからルティアもアリーセとしての感情が湧き起る。今の自分はそこにはいない。
でもテオバルトは違った。記憶があるか定かではないが、彼はアリーセのことを話さない。ルティアとして見てくれる。前世の罪悪感を呼び起こさず、息苦しさを覚えない。
テオバルトといると、ルティアも前を向きたくなる。彼と一緒に歩きたいと。でも――
「今日この日まで楽しい思い出をたくさん授けてくださって、ありがとうございます」
テオバルトと一緒の未来は歩まない。
月明かりに照らされたテオバルトの顔をルティアはそっと見上げる。彼もまたこちらに目を向ける。
「覚えているか?」
「ええ。忘れることなんてできません」
まるで雷に打たれたかのような衝撃だった。
「あなたを一目見た時から、目が離せなかった」
「……わたしもです」」
前世で自分を殺した男と再会するなんて、思いもしなかった。
「その後気絶してしまうから、大いに焦った」
「驚いてしまったんです……」
「俺を見て?」
指をなぞるように撫でられ、逃げるように手を引こうとしても、絡めとられて、くすぐったさと甘い疼きを呼び起こそうとする。
「ええ……あなたに会ってから、わたしには予想外のことばかりです」
ずっと感じていた視線に応えるように顔を上げ、困ったように微笑んだ。
「テオバルト様。わたし、おかしいんですわ」
「何がおかしい」
「何もかも、です」
殺した相手を、ちっとも怖いと思わないのだ。
断片的な記憶が見せてくれる笑顔のせいだろうか。それでも最期には「許さない」という言葉と共に彼はルティアを剣で突き刺した。
普通なら怖くてたまらないはずなのに……
「あなたに会う度、わたしの心臓はずっと忙しなくて、ちっとも落ち着きません。あなたのことを考えると、胸が苦しくなって、屈託ない笑顔にわたしまで嬉しくなってしまって、別れの時間が来ると、とても寂しくて、次も会えるかどうか、不安でたまらなくなってしまうんです」
ルティアの告白を黙って聞いていたテオバルトはそっとルティアを抱き寄せた。
「それのどこがおかしい。あなたは俺に惹かれているだけだ」
テオバルトらしい答え方に、ルティアは笑い、彼の大きな身体に体重を預けた。
「ええ。わたしはあなたに惹かれている。――あなたが好きなんです」
どんな理由でもいい。
今の自分はテオバルトに惹かれている。
前世は関係ない。ふとした瞬間に記憶が蘇って、今と比べてしまうこともあるけれど、カイとテオバルトは違う。
(テオバルト様は、今を生きている)
それはリーヴェスが前世の話ばかりしたがるから余計に感じた差異だった。彼は自分を通して、女王アリーセを見ている。だからルティアもアリーセとしての感情が湧き起る。今の自分はそこにはいない。
でもテオバルトは違った。記憶があるか定かではないが、彼はアリーセのことを話さない。ルティアとして見てくれる。前世の罪悪感を呼び起こさず、息苦しさを覚えない。
テオバルトといると、ルティアも前を向きたくなる。彼と一緒に歩きたいと。でも――
「今日この日まで楽しい思い出をたくさん授けてくださって、ありがとうございます」
テオバルトと一緒の未来は歩まない。