前世わたしを殺した男は、生まれ変わっても愛を捧ぐ
19、引き留める
ルティアは数秒固まったのち、「だめです!」と大きな声を出した。
「なぜ」
「あなたはこの国の王子なのですよ!? そんなの国王夫妻がお許しになりません!」
二人だけでなく、王子たちも猛反対するに決まっている。
「王族で聖職者の道に進む者は別に珍しくない。後継者は兄上たちが作ってくれるだろうから、一人くらい神と結婚する者がいても許されるだろう。むしろ最近図に乗っている教会への牽制にもなるから父上たちにも都合がいいはずだ」
微塵も悪びれなく、周囲の反対など知ったことかと語るテオバルトに、ルティアは挫けそうになりながらも反対する。反対しなければ、と思った。
「神に仕える道は、そんな簡単に決めてことではありません。そんな……結婚ができないからといって……」
「なぜ。未亡人になった夫人も、夫以外と再婚したくないからと入るだろう? 男が入っても、なんらおかしくない」
「あなたはまだ結婚すらしていません!」
「胸に抱く感情は同じだ。俺はあなた以外の者と添い遂げるつもりはない。強制的に誰かと結婚させられるくらいなら、あなたへの想いを抱えたまま、独身を貫き通す」
ついにルティアは反論する気力を失った。この王子に何を言っても無駄だ。
ルティアの沈黙をいいことに、テオバルトは顎に手を当てて、得意げになって話す。
「そうだな。結婚はできないが、同じ神に仕える身として、俺とあなたは運命共同体とも言えよう」
「殿下……」
「王族の籍は抜けるのだからもう殿下とは呼べないぞ。テオバルト、と呼んでくれ」
ルティアは途方に暮れたようにテオバルトを見つめた。彼は腰を屈め、ルティアと視線を合わせる。
「ルティア。これは俺が決めた道だ。あなたが責任を感じる必要は一切ないし、また俺の人生を邪魔することもできない。いいな?」
そうと決まれば、と彼は背筋を正し、さっそく両親にこのことを伝えると言い出したので、ルティアは慌てて彼の腕を掴んだ。
「お待ちください!」
「どうした」
「……何も今夜お伝えしなくてもいいではありませんか」
国王夫妻や王太子殿下、第二王子の楽しそうな顔が思い浮かんだ。彼らはテオバルトがこの国に留まり、ようやく腰を据えることに喜んでいた。
(そうよ。王妃殿下だってあんなに安堵していらしたのに……)
それを今度は急に世俗を捨てて聖職者になるなど……王妃が卒倒する未来が見え、ルティアは真っ青になった。せっかくの楽しい宴も台無しである。
(とにかく、今は時間を稼ごう。殿下も時間が経てば正気を取り戻すはず……)
果たしてその通りになるだろうか、と思ったが、今のルティアにはこれしか思いつかなかった。
「殿下。どうかもう少しだけ、時間をください」
「なぜ」
「あなたはこの国の王子なのですよ!? そんなの国王夫妻がお許しになりません!」
二人だけでなく、王子たちも猛反対するに決まっている。
「王族で聖職者の道に進む者は別に珍しくない。後継者は兄上たちが作ってくれるだろうから、一人くらい神と結婚する者がいても許されるだろう。むしろ最近図に乗っている教会への牽制にもなるから父上たちにも都合がいいはずだ」
微塵も悪びれなく、周囲の反対など知ったことかと語るテオバルトに、ルティアは挫けそうになりながらも反対する。反対しなければ、と思った。
「神に仕える道は、そんな簡単に決めてことではありません。そんな……結婚ができないからといって……」
「なぜ。未亡人になった夫人も、夫以外と再婚したくないからと入るだろう? 男が入っても、なんらおかしくない」
「あなたはまだ結婚すらしていません!」
「胸に抱く感情は同じだ。俺はあなた以外の者と添い遂げるつもりはない。強制的に誰かと結婚させられるくらいなら、あなたへの想いを抱えたまま、独身を貫き通す」
ついにルティアは反論する気力を失った。この王子に何を言っても無駄だ。
ルティアの沈黙をいいことに、テオバルトは顎に手を当てて、得意げになって話す。
「そうだな。結婚はできないが、同じ神に仕える身として、俺とあなたは運命共同体とも言えよう」
「殿下……」
「王族の籍は抜けるのだからもう殿下とは呼べないぞ。テオバルト、と呼んでくれ」
ルティアは途方に暮れたようにテオバルトを見つめた。彼は腰を屈め、ルティアと視線を合わせる。
「ルティア。これは俺が決めた道だ。あなたが責任を感じる必要は一切ないし、また俺の人生を邪魔することもできない。いいな?」
そうと決まれば、と彼は背筋を正し、さっそく両親にこのことを伝えると言い出したので、ルティアは慌てて彼の腕を掴んだ。
「お待ちください!」
「どうした」
「……何も今夜お伝えしなくてもいいではありませんか」
国王夫妻や王太子殿下、第二王子の楽しそうな顔が思い浮かんだ。彼らはテオバルトがこの国に留まり、ようやく腰を据えることに喜んでいた。
(そうよ。王妃殿下だってあんなに安堵していらしたのに……)
それを今度は急に世俗を捨てて聖職者になるなど……王妃が卒倒する未来が見え、ルティアは真っ青になった。せっかくの楽しい宴も台無しである。
(とにかく、今は時間を稼ごう。殿下も時間が経てば正気を取り戻すはず……)
果たしてその通りになるだろうか、と思ったが、今のルティアにはこれしか思いつかなかった。
「殿下。どうかもう少しだけ、時間をください」